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今回の相手は熊ではないが、体格やその獰猛さから、近くに寄せたときの危険度は熊と同等か、それ以上だという予想があったためそうしたのだ。
「撃ちます」
照之は宣言すると、今まで指を外していた引き金に指をかけた。獣の肩に狙いを定めて呼吸を止めると、静かに引き金を引く。
凄まじい轟音と共に、今度は狙い通り獣の肩の辺りの体毛が飛び散る。
しかし、獣が走り出す方がわずかに早かった。
照之の弾は獣の分厚い皮膚をかすっただけで、致命傷を与えるには至っていない。獣は怒りに満ちた獰猛な呼吸を繰り返しながら、2人のいる方めがけてとんでもないスピードで走ってくる。
照之が歯噛みし、ボルトを引いて排莢する間に、隣で毅が再び発砲した。しかし、全長が数メートルはありそうな巨体にも関わらず、獣は驚くべき身軽さで横に跳んで避けた。
そのせいで、毅の弾は迫ってくる獣の目の脇をかすっただけで、動きを止めることはできていない。その間に、獣はもう50メートルほどのところまで距離を詰めている。
照之は次弾を装填したライフルを瞬時に構え直し、四足歩行で迫りくる獣の肩に狙いを定め、発砲した。
着弾の瞬間、獣の体毛と血が飛び散った。そして今度こそ獣はのけ反り、その場に勢いよく倒れこんだ。
重量感のある重い音と共に横ざまに倒れ、痙攣を続ける獣を、照之と毅は、ライフルを構えたまま見つめる。
そして長い数分が過ぎたころ、空を掻くようにしてもがき続けていた獣の動きがやっとゆっくりになり、そして、停止した。
2人はなおもライフルを構えたまま、互いを誤射する心配のない位置関係を保ったまま、ゆっくりとした足取りで獣に近づいた。
5メートルほどのところまで近づいたところで毅が合図を出したので、照之はそこで止まった。すると横で、ライフルを構え直した毅が発砲した。
銃弾は、獣の額の真ん中を過たずに撃ち抜いた。
頭蓋骨が小さな熊を撃つときも、頭を狙うのはこうして動きを止め、外す心配がなくなってからだった。この一撃でとどめを刺し、獲物に安全に近づけるようにするのだ。
撃たれた瞬間、獣は大きく1度痙攣した。驚いたことに、動かなくなったと思っていたが、まだ息があったらしかった。
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