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父親代わりの祖母
娘想いの母がいた。
幼い頃から少し知的障害のある娘だったが、それでも一人の男と出会って結婚して私を出産した。
祖母は祖父と一緒に私の誕生を喜んだが、私の父は喜ばなかった。
それは私が先天性絞扼輪症候群で、両手両足の指が揃っていない状態で生まれてきたからだった。
「こんな子が俺の子どもであるはずがない」
父は生まれたばかりの赤ん坊だった私を否定した。
ほどなくして父と母は離婚して、父は慰謝料や養育費の約束をすることもなく何処かに消えた。
こうして祖母と祖父、そして実家に帰ってきた母の三人で、私は育てられていくことになった。
それから十年が経ち、私が小学生になった頃に祖父が亡くなった。癌だった。
私にとって初めての人の死である。
いつも一緒にいたはずの人が、ある日突然その日からいなくなる。それは私の手足の奇形を嫌って去っていった父と同じようでもあったが、重ねた月日と経験の重さからくる想いは雲泥の差であった。
私も、母も、祖母も泣いていた。
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