第12話『エメラの暴走と、イリアの正体』

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その時、アイリの脳裏に『彼女』の声が響いてきた。 『あーあ、やっぱりアタシが何とかするしかないのね』 「イリア!?何とかできるの!?」 アイリはすでにイリアを頼もしく思って、頼り切っていた。 しかしイリアの口調には何故か、いつもの勢いがない。 『アタシが魔力となって、その青い宝石に入るから、あの女に向かって投げなさい』 イリアが、魔力……?宝石に入る……? イリアの説明を聞いたアイリは、それを全く理解できない。 「ちょっと待って、イリア。あなたは何者なの?そうしたら、イリアはどうなるの!?」 『アンタ、相変わらず質問が多いのね』 すると突然、アイリのペンダントの赤い宝石から光が放たれる。 その光が、まるで映像を投影するようにして、アイリの目の前にイリアの姿を映し出す。 あの時の夢の中みたいにアイリは今、もう一人の自分の姿と向かい合っている。 金色の瞳を持つ、もう一人の自分と。 『アタシは、アイリとディアの愛の結晶よ』 「え!?もしかして……!?」 アイリが体に宿した、もう1つの生命反応。それがイリアだとしたら…… 『アタシは、アイリとディアの『魔力』が結ばれて生まれた生命。でも体はないの』 ディアがアイリに贈った、婚約ペンダント。 それに込められたディアの魔力と、それを身に着けたアイリの魔力の結合。 それによって、実体のない二人の『子供』が誕生したのだ。 今のイリアは、『魂を持った魔力』という存在でしかない。 それでもイリアは、やはり体を持って生まれたいし、自分を抱きしめてほしいと思う。 だからこそイリアはアイリの別人格となり、ディアと結ばれようとしたのだ。 魔力の融合だけでなく、体の融合で、今度こそ実体を持って生まれるために。 「でも、そんな事したらイリア、消えちゃうんじゃ……?」 『いいの。どの道、アタシはもうすぐ消えるから』 「え!?なんで、やだ、そんなの、やだよ……」 『甘えないの!もうアタシは必要ないでしょ?だって二人は結ばれたんだから』 涙を流すアイリに向かって、イリアはいつもの調子でウインクをしてみせる。 イリアはもう一人のアイリであり、アイリとディアの間に生まれた子供。 実体がなくても確かに大切な家族であり、娘なのだ。 そんな簡単に手放せる存在ではない。
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