第12話『エメラの暴走と、イリアの正体』

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パーティー会場は騒然としていた。 突然、凶暴な魔獣が出現して暴れ出したからだ。 魔獣となったエメラは次々とテーブルをなぎ倒し、人々に襲いかかる。 全員が仕込み客で本物の貴族はいないが、最強の魔獣に立ち向かえる者もいない。 急いで会場に駆けつけたアイリとディアは、その光景を見て息を呑んだ。 「あれってエメラさんだよね?一体どうしちゃったの!?」 「あれは、魔力が尽きて自我を失っています」 それが、まるで先日の自分の姿を目の当たりにしているようで、ディアは苦悶の表情を浮かべた。 ふと、アイリはエメラの足元で光る小さな宝石を見付けた。 「エメラさんの足元、見て!あの宝石が落ちてる!」 「はい……ですが、近付くのは難しいですね」 暴走状態の魔獣に近付くのは、あまりにも危険だ。 だからと言って、どうする事もできない。 その時、二人の後ろから誰かが駆けつけてきた。 魔法書を片手に、エメラに向かって狙いを定めるのは、レイトだ。 「ブリザード・アロー!!」 レイトの放った魔法は、巨体のエメラの両足を氷で覆い尽くす。 アイリは驚いて後ろを振り返る。 「レイトくん!」 「今のうちに、会場の人たちを避難させておくよ!」 そう言うとレイトは後方に下がり、出入り口の扉を大きく開放した。 幸い、会場の人たちに負傷者はいないようで、次々と外へ避難していく。 レイトの氷の魔法でエメラを足止めできるのは少しの時間だ。 アイリは思い切って走り出すと、エメラの足元の宝石を拾おうとする。 しかしエメラの片足が氷を破壊し、その足の爪でアイリを切り裂こうと構える。 「えっ……きゃっ!!」 「アイリ様!!」 咄嗟に駆け出したディアの体が発光し、自らの意志で魔獣の姿に戻った。 魔獣の姿のディアは、エメラよりも一回り体が大きい。 勢いのままエメラに体当たりをして、アイリへの攻撃を逸らした。 今のディアには自我があるので、魔獣の姿でもエメラのような暴走はしない。 本能により、魔獣は魔獣を攻撃しない。 エメラは同種族のディアに敵意は向けないが、アイリには攻撃的な目を向ける。 それは単純に本能ではなく、エメラの人としての潜在意識なのだろうか。 「どうしよう……どうしたらエメラさんを止められるの?」 アイリは、なんとか拾えた青い宝石を手の中で握りしめて考えを巡らす。 ディアはエメラを傷つけるような攻撃はできない。 エメラを完全に止める事はできない。 エメラは魔力が尽きて自我を失っているだけなのだから。 ならば、魔力を回復させればいい……? そんな考えが浮かんだものの、どうすればいいのか分からない。
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