あなたに会いたい

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その日は 保険請求のカルテの整理があって 仕事が休みだったけど診療所に行った。 「おはようございます」 受付けに挨拶して 診療所の中に入っていく。 スタッフルームの先にあるロッカールームに向かおうと スタッフルームに近づいた時だった。 スタッフルームから 航と後輩アシスタント達の声が聞こえた。 「マジ、お化けか幽霊かと思った。  帰ったら マンションの陰からヌ〜って。 怖いよ」 航の声だ。 「きゃ〜!ホラーですね」 「最終で来るんだから 帰れって言えないだろ?」 「水島さんて 大人しめに見えて ガンガン行くタイプだったんですね。 意外〜」 「よく気が付く人だから 見習いたいなって思ってたのに ストーカーだったなんて」 ストーカー? 私が? 「水島さんて 話していても な〜んか楽しくないんだよね」 航? 「話かけても『はい』とか『そうですね』 くらいしか言わなくて ロボットと話してるみたい」 「先生、やだ〜!」 笑いがドッと起きる。 体中が震えた。 首から足の先まで冷たくなっていく。 なのに 顔だけは熱かった。 私は固まっている足を動かして 来た通路を戻り 診療所から出た。 さっき挨拶した受付けが 不思議な顔をしてこちらを見ている。 鈍器で頭を殴られたみたいだ。 ウワンウワンと 頭の中で何かが響いている。
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