あなたに会いたい

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毎年夏になると 診療所恒例のテニス大会が催される。 私は くじ引きで坂城先生とダブルスを組むことになった。 テニスの経験がない私を前衛において ほとんどの球を先生が受け 優勝してしまった。 聞くと 大学までずっとテニスをしてたらしく 動きの俊敏さに納得。 それでも 少しもボールを打てなかったのが申し訳なくて テニス大会の後 診療所の皆には大きなホール 坂城先生には小さなホールのチーズケーキを作って 診療所に持って行った。 「水島さん、料理好きなの?」 チーズケーキの箱を受け取りながら 先生が言った。 「…あ、はい」 面と向かって話かけられると 上手く話せない。 「それなら 今度、家にご飯作りに来てよ。 僕、一人暮らしだから」 …これ、社交辞令で言ってるだけだよね? 何かを期待してしまいそうで 控えめに理解しようとした。 でも 仕事が終わって支度を済ませ 診療所を出た所に 坂城先生がやってきて 「今、帰り? で、いつうち来る?」 とニコニコしながら聞かれた。 「皆でですか?一人でですか?」 念の為聞いてみる。 「この流れで 皆ってことないでしょ。 もちろん、水島さん一人だけで」 「…」 「空いてる日がわかったら 僕の個人ラインに送って。 それじゃ、お疲れ様でした」 そう言って 仕事に戻ってしまった。
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