27 秘密の扉

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「あのさ……電話の履歴を調べていたんだ。智紀、話したいことがあるって送ってくれていただろう? あれって、夕貴達のこと? でも、少し前だったような……」 「あぁ……それは、あの時は、未春がSAKURAだったことに気がついていなくて、順番がおかしくなってしまったが……その……気持ちを、話そうと思っていたんだ……」 「気持ち……?」  梶が何を考えているか。  一緒にいる空間でリラックスしている、というようなものは伝わってくるのだが、何を考えて何をしたいのか、そういったことまではさすがに分からない。  梶の気持ちが知りたかった。  そして佐倉もまた、梶を特別に思っていることを伝えたかった。  そこからはまたお互い無言で、梶からは緊張した空気だけが伝わってきた。  車を止めた後、つい先日、訪れたばかりの梶のマンションのエントランスに入り、今度は部屋の主人がちゃんと鍵を開けるところまでをしっかり見届けることになった。  やはり中は高級マンションらしく、プライバシーが保たれた内廊下で、梶の住んでいる階は二部屋しかなかった。  その片方も梶が所有していると聞いて、異次元すぎて言葉が出なかった。  煌びやかな高級家具が置かれたハイグレードな部屋を予想していたが、室内はシックな黒で統一されていて、ほとんどと言っていいほど物がなかった。  リビングスペースはがらんとしていて、デカいソファーがドカンと置かれているだけで、他には何もなく、テレビすら置いていなかった。 「……何というか……シンプルな部屋だな」 「ほとんど寝に帰るだけだから、何もないんだ。冷蔵庫の中も水しか入っていない」  部屋を見ればその人の暮らしぶりが分かるというが、余計なものをとことん削ぎ落とした、いかにも梶らしい部屋だなと思ってしまった。
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