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明らかに場違いな人種が混じっていると余計に目立ってしまうのだろう。
モエちゃんと呼ばれた女子社員は、ぱっと見ても周りと比べてかなり可愛らしい容姿をしていた。おそらくオメガだろう。
社会において、人口が少ないオメガは貴重な存在とされている。
オメガは庇護欲を誘うような、甘く可愛らしい見た目の者が多い。
薬で管理していれば、無自覚にフェロモンを撒き散らすことはないが、それでもオメガであるというだけで周りの反応が変わることは確かだ。
男女問わず多くの人に求められてしまう。
つまり、それだけモテるということであるが、そうするとストーカーなどの別の問題が出てきてしまう。
オメガが自分の身を守るために、警戒心を強めることは間違いではなかった。
モエちゃんも少し過剰なくらい警戒するのは必要なことだと思うが、その矛先を向けるのは勘弁してほしかった。
佐倉は仕事に集中して、話が聞こえないフリをして、床に散らばった紙屑を片付けていた。
「……でも、あの人、アルファじゃないかな」
おそらくモエちゃんが発した言葉に心臓が揺れて、佐倉の手が止まった。
嫌な視線を感じて背中にジワリと汗が滲んだ。
「暗い感じだけど、背が高くて、スタイルがいいじゃない? それに匂いが……」
佐倉は出来損ないのアルファでも、微弱なフェロモンを纏っているらしい。
敏感なオメガは、アルファの匂いを嗅ぎ分けることができる。
ゾクっと寒気がしたが、知られたからといってどうなるわけでもない。
佐倉は帽子を深く被り直して立ち上がった。
「まさかぁ、アルファが清掃員? ありえない、底辺じゃん」
「会議室にいた部長の匂いじゃない? 確かアルファだよね」
「そうだと思った。既婚者だけどカッコいいよね! アルファって感じが最高。この前さ……」
女性社員達の会話はいつしか別の話題に流れていた。
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