2 変わらない日常

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 もう何年も経って、未練も何もないはずだ。  何もかも放り投げてきたはずなのに、目にするだけで心が乱れてしまうのが悲しくて辛い。 「佐倉くん? 大丈夫か? 体調が悪そうだ」 「……大丈夫です。ちょっと寝不足で……」  帰って早く寝た方がいいよと言われて、佐倉は無理矢理口の端を上げて笑った顔を作った。  本当は膝から崩れ落ちて腕を抱えたいくらい、息苦しくてたまらなかった。  シャッターを切る時の音、手に伝わる振動までリアルに思い出せてしまうのが悲しい。  あれは自分のものではない。  もう、とっくに手を離れて、どこへ行ってしまったかも分からないのだから。  走って走って  逃げ出したはずなのに、一歩も進んでいない。  悔しくて悲しくてたまらなかった。  □□□
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