24 さくらを追いかけて

4/6
前へ
/161ページ
次へ
 目黒川に電話をかけると、こちらはコールが鳴る前にハイと声が聞こえた。 「今戻った。未春は今日出社しているのか? 電話に出ないんだ。連絡がつかない。勤務は午後からだよな? 様子を見ておくように頼んだが大丈夫だったのか?」 『落ち着いてください。佐倉様ですが、現在系列のビルで欠員が出たそうで、本社ビルには出社されていません。申し訳ないのですが、私もこちらでの勤務がありますので、状況は確認できておりません』 「何だって!? 大丈夫なのか? まさか倒れていたり……」 『三日前にマンションの前でお会いした時は元気そうでした。ですがその時、愛華嬢が勝手に押しかけてきていて、鉢合わせになり、仕方なく仕事上の付き合いがあったことは伝えました』 「お、お、お前……」 『愛華嬢のことです。ライバルだと分かったら、絶対に今後も接触してくるはずです。いらないことや嘘を言うかもしれません。その時に揉めるより、過去の関係だったと正直に伝えておいた方がいいと判断しました』  確かに派遣されてきた女性の中でも、愛華はかなりしつこかった。  立場は分かっていると思うが、それでも偶然を装って近づいてくるかもしれない。  彼女達は信用が第一の仕事だが、愛華は父親が裏社会で権力を持っていて、望んでこの仕事に就いたらしい。見た目でも持て囃されていたので、信用なんて考える必要もなく調子に乗っていそうだった。  三人が鉢合わせた状況がよく分からないが、とにかくもう一つ、フォローが必要なことが増えたということだ。  梶はもっと頭を下げて、椅子にくっ付いてしまいそうになった。 「分かった。どの道、話さなければいけないことだった。俺からちゃんと話す。今から未春の家に行く」
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!

721人が本棚に入れています
本棚に追加