24 さくらを追いかけて

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『ああ、それなら。もう引越しは完了しています。時間的にももう出勤されているかと。ヤマノクリーンに連絡をして、出勤先のビルを聞いてみますか?』 「いや……今本社の前まで来たから、俺が直接聞きに行く」  ちょうどよく本社の前に着いたので、電話をするより早いと、梶はタクシーから降りて走った。  もしかしたら、こっちに来ているかもしれないし、近くのビルならすぐに向かえばいい。  それで時間をもらって話をしたい。  ビルの中に滑り込むように入った梶は地下に向かった。  ヤマノクリーンの看板が見えたら、乱れたスーツを正してノックをしてからドアを開けた。  ドアの向こうは事務所のスペースになっていて、雑然と並んだ机の一番奥、パソコンの後ろから、男の顔がぬっと出てきた。 「はい? どちら様ですか?」 「梶エンターテイメントの常務取締役で、梶智紀と申します。突然すみません、佐倉さんは今どちらにいらっしゃいますか?」  一瞬間があって、男はぽっかりと大きな口を開けてから、慌てた様子で立ち上がった。 「梶常務ですか!? これは、失礼しました。ええと、佐倉ですか? ああ、確か以前部屋の掃除を担当していましたね。しばらく隣駅のビルに行ってもらっていたんですけど、実は今、休暇をとっておりまして……」 「休暇? どういうことですか?」 「ええと、三日前、田舎に住んでいるご家族から、彼の叔父が緊急で手術をすることになったからと連絡があって……。緊急連絡先として私の携帯を教えていたそうです。一度ここに寄ってもらって話をして、その足で向かったと思います」  ずいぶんと佐倉の事情に深く関係していそうな雰囲気から、彼が話に聞いていた、佐倉を助けてくれた泰成先輩に間違いないだろうと分かった。 「分かりました。すぐに連絡を取りたいんですが、なかなか繋がらなくて困っているんです」
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