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実際に泰成に見てもらおうと、梶はこの場で佐倉に連絡を取ろうと電話をかけ始めた。
「あー……それは、その……あいつ、慌てて出て行っちゃったので、あそこに……」
作業着姿の泰成が、申し訳なさそうに指差した先には、一台のスマホが置かれていて、ブーブーと音を立てて振動した後、画面は真っ暗に戻った。
耳に当てたスマホから、留守番電話に接続します、と声が聞こえてきた。
「すごい鳴りまくってて、見るわけにもいかないし、あいつも困っていると思うんですけど、私もここ離れるわけにいかなくて。一応向こうの親族の方には忘れていると伝言してほしいと連絡しています」
「……どこですか?」
「えっ?」
「未春が向かった場所です。私が届けに行きます」
梶の迫力に押されて、緊張した様子の泰成の額からたらりと汗が流れた。
どういうことなのか分からないという顔の泰成から、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえてきた。
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