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「そんなわけがあるか! SAKURAの写真が他のどの作品より輝いていた! 間違いなく優秀賞だったんだよ! 俺が奪ってしまったせいで、SAKURAは写真をやめてしまったんじゃないか……俺が未春の夢を……俺のせいで……」
宥めて落ち着かせようと思ったら、両肩を掴まれて倍の熱量で返されてしまった。
これはどう説明したらいいのか、考え過ぎて頭が痛くなってしまった。
「俺の作品を気に入ってくれたのは嬉しいけど、写真をやめたのは自分のせいなんだ。夕貴のことだよ。話しただろう、あの事がちょうど結果が出るくらいの時だった。夕貴を殴ってしまった手で、カメラを持てなくなったんだ。だから全部捨てて逃げてきた。コンテストの結果は残念だったけど、それで誰かを恨むとかそういう思いになったことはない」
「恨んで……ない?」
佐倉が大きく頷くと、梶は魂が抜けたような顔になって、手から力が抜けてぐらりと揺れてしまった。
また地面に倒れそうになったので、佐倉は急いでデカい梶の体を支えた。
「おーい、しっかりしろよ。なんでショック受けるみたいになっているんだ。謝る必要ないのに」
「ううぅ……」
「もしかして、俺のファンだったとか?」
いつも自信たっぷりで堂々としている男が、花が萎れたみたいになって、真っ赤な顔で頷いていた。
いつもとても年下には思えないのに、今は梶に年相応の幼さが見えてドキッとしてしまった。
「そっか……、そこまで思い詰めて、何年も謝ろうとしてくれていたなんて……逆にこちらがお礼を言うべきだな。忘れないでいてくれて、ありがとう」
梶はまた目を潤ませて、こくこくと頷いた。
ちょっと可愛いなと思ってしまい、佐倉は笑いそうになってしまった。
「まったく、泰成先輩も俺がSAKURAだったこと喋っちゃうなんて」
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