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それに、おそらく二人は結婚しているだろうと思っていたので、番になった二人の姿を見るのも恐かった。
「大丈夫だ。言っただろう、夕貴さんは怪我から回復して、もう歩けるようになっている。未春に会いたいと言ってきたのは向こうだ」
叔父の容体が落ち着いたことを確認した佐倉は、梶とともに新幹線に乗って戻ってきた。
それから一週間後、津久井と連絡をとっていた梶は、待ち合せ場所を決めて、いよいよ二人に会う時間を作ってくれた。
待ち合わせ場所の近くまで来たら、足が止まってしまった佐倉に向けて、梶は手を差し出してきた。
本当に梶のおかげだ。
この人がいなかったら、自分は一歩も進んでいなかった。
そう思った佐倉は、梶の手を掴んで歩き出した。
「智紀……ありがとう」
「ちゃんと、言いたかったこと。悔いがないように伝えてこい。待っているから」
カフェに着いたら佐倉は梶の手を離した。
ここまでお膳立てしてもらったが、決着は自分でつけたいと思っていた佐倉は、一人で店に入ることを選んでいた。
梶にずっと甘えていい問題ではない。
自分が引き起こしたこと、ちゃんと謝らずに逃げてしまったこと、それは他の誰かに頼って解決する問題ではないからだ。
梶に背中を押されて佐倉はカフェの中に入った。
店内は空いていて、待ち合わせだと言うと外のテラス席に案内された。
そしてそこには、五年ぶりに会う夕貴と、その隣には津久井の姿があった。
夕貴は五年前より少し髪が伸びて、大人っぽい雰囲気になっていた。
そして佐倉の姿を見ると元気よく立ち上がり、あの時怪我をした足を使って、スタスタと軽快に歩いて近寄ってきた。
「未春、久しぶり」
「夕貴……足は……大丈夫なのか? 痛みは? まだ通院して……」
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