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28 それは恋が目覚める色
窓から差し込んできた明るい光に照らされて、かつてこの目で見た、あの鮮やかな光景が目の前に飛び込んできた。
まるでおかえり、待っていたよと声が聞こえたような気がした。
「お……俺が撮った……写真? コンテストに出した……」
「そうだ。サクラメント、未春の作品だ」
ベッドの上にあったのは、大きく引き伸ばされているが、佐倉がコンテストに提出した写真だった。
ベッドの上の壁がほとんどが写真になっていて、その大きさと迫力に息を吸い込んだまま吐き出せなくなった。
「データを手に入れて、壁全体に飾った。当時この写真に衝撃を受けて……それ以来、これを見ながらでないと性的な興奮が得られない状態になった」
「………ん?」
ファンとしてそこまで好きになってくれたのかと感動を覚えていたのに、何か方向がズレて首を傾げた。
「せ……性的?」
「初めて作品展でこれを見た時、写真からフェロモンの匂いを感じたんだ。驚いたよ……、その場でこれを見ながら……触ってもいないのにイッてしまった」
「なっ、なっ……ええ!? 嘘だろう!?」
「嘘じゃない。それ以来、他の何を見ても興奮しなくて、唯一できるのは……この写真を飾ったこの部屋だけで……、そういう時も……ずっと写真を見ながら……ああ、俺は何を言って……」
梶は目元を隠すように顔に手を当てながら、気まずそうな顔で語っていた。
驚きの告白を受けて、どう噛み砕いたらいいのか、佐倉は頭の中でぐるぐる考えてしまったた。
「写真から俺のフェロモンを感じたって?」
「……そうだ。考えれば、そういうことだよ」
「そういうことって……?」
「つまり、俺は未春のフェロモンを写真から感じ取っていたんだ。だから、本人に会った時、同じフェロモンを感じて興奮したんだ。写真を見なくても本人なんだから、惹かれるのは当たり前なんだ。一度これだと決めたら、そのフェロモンにしか反応しない」
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