1 贖罪の日々

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「佐倉さんのような混合型は希少だから、臨床研究において大事な存在なのよ。特にバース研究は未知の部分もあるし、血液のサンプルをもらえるだけでかなり助かってます」 「こちらとしては、血を提供するだけて金をもらえるので、ありがたい話です」  佐倉がそう言うと、医師は少なくてごめんなさいね、と言って笑った。  少しでも多く金を稼がなければいけない。  切実な佐倉にとって、お金になることならなんでもよかった。  希少種、そう呼ばれた佐倉は、二つのバース性を持って生まれてきた混合型だ。  アルファ性が八十パーセント、オメガ性が二十パーセントという配分のため、ほとんどアルファだと言っていい。  不完全型のため、オメガとしての機能はほとんどない。  匂いを感じることはできるが、オメガ特有の子宮もなく、発情期もない。  アルファとしては微弱なフェロモンは出るらしいが、オメガのフェロモンにあてられて、ヒートを起こすこともない。  もちろんアルファの抑制剤を飲む必要もないし、日常生活において、何か特別なものはなにもなかった。  考えれば、ほとんどベータと変わりないのではないかと思うくらいだ。  アルファとしてオメガを番にすることはできるだろうと言われているが、もうその機会はない。  自分のバース性など無くなってしまえと思うのだが、臨床研究の被験者は国から給付金がもらえる。  それを知ってから佐倉は、定期的に病院に通って、検査を受けて血を提供し続けてきた。  清掃の仕事だけでは金が足りない。  少しでも多く働いて金を、佐倉の頭にはそれしかなかった。  銀行のATMの画面を食い入るように見つめた佐倉は、間違いがないか何度も確認して、決定ボタンを押した。  頑張って働いたつもりだったが、今月は七万しか送金できなかった。  印刷されてきた明細書を見て、佐倉はため息をついた。
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