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振込み人名欄には、治療費と印字されている。
こうやって毎月休むことなく振り込みを続けてきた。
こんなことでしか償うことができない。
それでも今の佐倉にはこれが精一杯の償いだった。
いつ終わるか分からない贖罪。
自分が生きている間はずっと続けていくつもりだ。
駅から遠く離れた安アパートに帰宅した佐倉は、部屋の電気をつけた。
電球がだめになっていて、チカチカと眩しく光るので結局電気をすぐに消した。
テレビも何もない。
佐倉にとって家は帰って寝るだけの空間だ。
トイレと一緒になった狭い風呂でシャワーを浴びて、畳に敷きっぱなしの布団に潜り込んだ。
毎日黙々と仕事をして、家に帰って寝るだけ。
休みの日も日雇いの仕事をして金を稼ぐ。
楽しみなど一切ない。
これが今の佐倉の生活だ。
佐倉の残りの人生は贖罪そのもの。
もうとっくに記憶から消えてしまった温もりを求めて、薄い布団にくるまった。
目を閉じると自分の名前を呼ぶ可愛らしい笑顔が浮かんできた。
「ごめん……ごめんね、夕貴」
一人で寝る部屋、紙のような薄い布団はいくらくるまっても少しも温かくならなかった。
佐倉は寒さと胸の痛みに震えながら、今日も眠りについた。
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