第6-3話 サンプル ツー

1/1
前へ
/63ページ
次へ

第6-3話 サンプル ツー

60b63e5c-62c1-462b-a373-2930673c4a962d9e69d1-bbbe-4aaf-b097-50d26230f4b18618114f-761a-45e8-874a-a035f9250d2d  露店が並ぶホルトハミーの街。  そこで早苗は、何種類ものパン、ミカンを見ている。 「さ、早苗さま……その奇跡の薬は、どう作ル?」 「ペニシリンっていうんだ」  早苗は続ける。 「カビから作るんだけど、7日で作るのなら、すでにカビてるものがいる」  他にも候補はあったが……  炭疽はスルホンアミド、通称サルファ剤、今でいうST剤に自然耐性がある。  土から作るストレプトマイシンは、有効株を見つけて、培養するのが死ぬほど大変だ。 5ee47907-ff27-47db-aeb2-98f03c17d5f5  ララはなんとなく「細菌を倒す物質」だと、理解したようだ。 「……実臨床では抗生剤の多剤投与するんだが」  まぁ、ペニシリンだけでも作れれば奇跡だ。  と、パン屋を見つける。 『――待って! これ、全部買う』 『え? 豚用のエサだけど……』  だが必死に懇願し、カビたパンを安価で譲ってもらえた。 「次は大量のガラスが必要だ」 「……うん。どれぐらイ?」 「これを作れるぐらい」  羊皮紙に羽筆を走らせる。 1a3b1cac-c6c8-45cb-9d18-b71442b4ff71 「このサー・ウィリアム・ダンの向流分配装置で、アオカビからペニシリンを単離する。じゃないとコンタミで使うと危ない」 「……あァ」  だがララは声を失っていた。 「スパイスを売ったお金が40アール(40万円ぐらい)あるから、それで――」 「……あの、無理かも。王国のガラス職人たちは、コップを作るのが精いっぱい。しかも、ものすごく高価だヨ……」 「ああ……」  そういえば、城にも窓ガラスがなかった。  中世では、ガラスは超贅沢品なのか。 「じゃあ、僕の世界の方法でガラスを作る」  ガラスだけ産業時代に突入だ。  雑貨屋で、運搬中に割れたガラスの破片を大量に5アール(5万円)で買う。 「これを鍛冶屋で溶かして、蒸留器を作る。そしてアンモニアと炭酸ナトリウムを――」  まとめると、ガラスの大量生産には……  珪砂(どこにでもある)+ソーダ灰(これが難しい)+石灰石(砕いた貝殻でもOK)が必要だ。   「……わかった! わたしはなに手伝えばいイ?」 「じゃあ、アンモニアをお願い」 「うん! どうやるノ?」  と聞く彼女に、遠慮なく早苗は答えた。 「ここにおしっこ入れて」  そして土器の大きな容器をいくつか渡される。 「…………」 「10リットルぐらい、大量に出して」  それを見たララは、数秒固まってしまった。 b1e139c5-bbab-4512-b9c7-aaa919ec6edc
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加