第13章 信田綺羅

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この二人の今の行為の方が生々しいというか。他人に見せるためのよそ行きじゃないんだ。 やりたいことをやりたいように思うさま貪っていい相手だって、わたしに対して安心感を抱いていてくれてるのなら。その方が当然、嬉しいし越したことはない。 凪さんがうっと呻いてわたしの中に直に放出し、即漣さんと交替する。そうやって相次いでわたしで二人が満足すると、しばしみんなで雑魚寝みたいに横たわり黙って浅い息をついていた。 「…わたしね。夢があるんだ。いつか一番、…というか。同着一、二番で好きな人の。お嫁さんになる」 「へえ、いいじゃん。…なれるといいね」 気がついてるのかいないのか。適当にもほどがある心のこもってない漣さんの相槌。すっかり慣れてるので、わたしは構わず言いたいことをどんどん口にした。 「お嫁さんはいろいろハードルがあって、なれるかどうかは難しいところ。だから頑張ってもどうしても無理だったら、仕方ないから愛人にしてもらうの。ペットでもいい。一生個室に閉じ込められて、夜となく昼となく玩具にしてもらえるといいなぁ。赤ちゃんも産みたい、好きな人たちの」 「はは。キラには難しそうだな。誰かに飼われて閉じ込められてたら、干上がっておかしくなっちゃうと思うよ。だって村中の男たちと。毎日立て続けに片っ端からやりたいだろ?」 寄り添ってわたしの髪を撫でてくれてる凪さんが軽く笑い飛ばした。その手のひらの温かく柔らかな感触が気持ちいい。…わたしは反論せずにうっとりと目を閉じた。 「そうかな。…そうかも」 想像はともかく。実際には、そんなものなのかも。 地下でひたすらこの人たちを待つだけじゃ、結局物足りなくなっちゃうのかもしれない。そういう意味ではやっぱり、閉じ込められて専属の愛人かペットになるより。 インストラクターとご当主さまたちの性の捌け口を兼任してる、今みたいなポジションが一番居心地いいのかもしれないな。お互いの情欲を遠慮なく吐き出し合って処理できる、便利なセフレみたいな存在。 けど、本当は。…ご当主さまの次の代を身籠る器に。一番なってみたかった…。 「凪さんと漣さん。…ねぇ、言って。わたしをお嫁にする可能性が100のうち、ほんの0.0001パーセントくらいは。なくもないかもしれないって。…言葉だけでいいから。言ってよ…」 「可愛いな、綺羅は」 微笑ましそうな声でそう呟き、わたしの髪や背中を撫でてくれる凪さんと漣さん。いや、言うだけなんだから。言ってくれればいいのに。 でも、いいんだ。今は柚季だってここにはいない。わたしが誰より一番この人たちに近いんだから、そういう意味では特に不満はない。 考えようによっては、次の新しい女の子をこの人たちが見つけようともせずに保留にしてるってのは逆にチャンスかもしれないな。 うとうとしながらそんなことを考えた。彼らが柚季を待ってる間は、わたしは次の新しい嫁候補に遠慮する必要もなくここでこうしていられる。 その間に少しずつでも心の距離を詰めて、やっぱり結局は綺羅が一番可愛い。これじゃもうとても手放せないよ、とこの人たちをめろめろにさせられたら。今度こそ、夜祭家の器はわたしのものだ。 そういう意味では短期間でこの人たちの心をすっかり魅了してしまった柚季さまさまだな。あの子が作ってくれたせっかくのこの好機を上手く活用しなきゃ、と取り止めもなく考えながら。わたしはぎゅっとお二人の温かな身体にしがみついて、その心地よさに誘われて深い眠りへと引きずり込まれていった。
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