第14章 岩並誉

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村の民度の良さも全て、このシステマティックで合理的な制度ありきだ。そう考えたら、追浜がこの土地の平和の維持のための礎になってくれれば。…とここのみんなが願ってしまうのはまあ、無理ないんじゃないかな。 それに。 「実際にあの子だって、現実の祭事やご当主さまお二人の手管を経験すれば。それがすごく素敵でいいものだって理解できるようになるまでそんなに時間はかからないんじゃないかな。…だって、めちゃくちゃいいでしょうあれって。村の人たちはただ普段から普通に経験してるからみんな良さを知ってるだけで。外から来たからって性感や身体の造りが違うわけじゃなし、現にやればすぐにはまって夢中になるんじゃないかな。追浜も例外じゃなく」 喋りながら、脳内でうっかりちらと想像上の姿が浮かんでしまった。 いかにも清純で汚れてない、すっきりした清楚な様子が魅力な追浜。喉元やすんなりした腕が露わなところすら見せたことがない、いつもきちんとした服装。崩れたところの想像がまるでつかない、育ちのよさが滲み出てるけど。 それでもあのときは、村の他の女の子たちやこの水底さんみたいに。昼間の浄らかな姿からは全くかけ離れた、発情した淫らな獣みたいな我を忘れた振る舞いを見せるんだろうか。とてもリアルには思い浮かばない、と言いつつ早速妄想が脳内で捗り出して。…つい、身体が。微妙に反応しちゃいそうだ。 ああ見えて追浜だって生身の女なんだから。他の子たちと同じようにあれが好きになって生々しい快楽の虜になり、あっという間に溺れ出すに決まってる。同じ生物の肉体を持ってるわけだし、別に違うところなんてありゃしないだろ。とは当然に思うんだけど。 それでも何故か勝手に服を着てない姿を想像して、瞼の裏でしどけない露わな姿態を取らせるのは何だか…。もしかして、これって罪悪感ってやつに近い感情なのか。村の女の子たちに対してはこれまでほとんど感じたことのない感覚だ。 卑猥な姿を晒してる知り合いの女子を妄想して何だか悪いことしてるような気持ちになるなんて。 やっぱりこれって、彼女が外部から来てる子だからこっちも無意識に遠慮があるせいなのかな。 …いやでも、感情や常識はともかく。身体は同じ女性なんだから、快感や性欲はみんなと変わらないはず。と気を取り直して俺は先を続けた。 「そこは凪さんと漣さんを信じて任せておけば。きっと必ず、彼女に本当の歓びを教え込んであれなしじゃ生きていけないように意識を作り変えてくれるでしょ。あの人たちのテクニックなら間違いなくひとたまりもなく嵌まるだろうし。…何の問題もないですよ。安心して大丈夫、じゃないですか」 言いながら、あの双子に無理やり組み伏せられて身体を開かれてる追浜の姿をまた幻視してしまった。…途端に興奮しそうな自分の身体の一部を密かにどうどう、と宥め。今頃はもしかしたら、この家のどこかの部屋に連れ込まれて。既に二人に服を脱がされて身体を弄ばれてるんじゃ…、っていざリアルに想像すると。それはそれで何となく、曰く言い難い微妙な気持ちになった。 自分だって、現に今同じ家の中に追浜がいるのわかってるのに。気にせずこうして水底さんとの昼下がりの快楽に溺れてる。 それと同じことを三人がしてるだけだ。どうせ将来結婚することが決まってる者同士だし、いつ何をしてもあの人たちの自由。 理性ではちゃんとそう納得してるのに。実際に多分今、裸に剥かれた彼女に容赦なく烈しい調教が加えられてるのかも。…と思うだけで。 抑えきれないぞくぞくする興奮が込み上げてくるのと同時に、何とも言えない割り切れない寂しさがどうにも拭えない。 よくわからない。他人が別の人とする、と考えると何だか落ち着かない気持ちになるとか。確かにフィクションではよく見るけど、実際に現実では感じたことないし。 これは、彼女が向こうの世界から来た人だっていうのが頭にあるから。俺の方もつられて漫画や小説の登場人物みたいな考え方になりかけてるってことなのか?無意識に影響されて。 けど、そんなの不要な感情だし。他人のセックスで動揺するなんてそもそも理不尽だし、合理的じゃない。…無意味だ。 表には出さないよう努めてたけど、ぴったり肌をくっつけてる水底さんには何かが伝わったのかもしれない。両腕を背中に回して俺を優しく抱きしめると、安心させるように低い声で囁いた。 「心配しなくていいわ。…今日はほんとに、最初の顔合わせのようなものだから。いきなり抑えつけて問答無用でやっちゃうことはまずないと思う。村で育った子と根本的なものの考え方が違うからね、性に対する」 噛んで含めるように言い聞かせる。さっき脳内で思い浮かべてた追浜の痴態の想像から呼び覚まされた興奮の名残りと、水底さんが柔らかく押しつけてくる胸や下生えの感触が結びついて再び俺は生理的復活を始めた。…ちゃんと真面目に話、聞いてはいるけど。一体何に興奮してんだって思われそうで、ちょっと慌てて下半身を離す。
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