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その話がしたいのか。俺は何ともいえない気持ちになり、やや歯切れ悪く言い訳をした。
「うーん。…今のところまだ。まあ、始まったばかりだとは聞いてるし。そのうち、多分順番が来れば」
その後彼女と特に仲のいい友人連中は原則としてあえてお披露目には招ばれなかったんだ、って話を聞いた。俺は追浜と同クラスじゃない人間の中で唯一、親しいメンバーの内に入ってたようだ。
まあ、そもそも一緒にいるところを捕捉されてお屋敷にも揃って招待されてたし。仲がいいと夜祭家に判断されるのは当たり前なのかもしれない。
それどころじゃなく彼女が夜祭家に入るのに難色を示してる、とまで思われてるかも。そう心配になり始めると俺がお披露目に招ばれないのもそんな理由なんじゃないか、って気がしてきて微妙に落ち着かない。そもそも村の制度に反対する気なんて。俺には全然、ないのに。
心さえ俺の方に向けてもらえたら身体なんて。そもそも器候補じゃなくても、こういう場でみんなに共有されて揉みくちゃになるのは村民なら誰でも当たり前だし。
その相手がご当主さまだからそれとは別、ってなるわけでもない。人前で晒し者にされることだって。それで村のみんなの性欲がより高まって、盛り上がれるならちゃんとした意義があるし。
少し正直になれば。…俺も彼女の淫らな姿を見てみたくないことはない。ていうか、みんな見てるのに。…俺だけが見られないのは。なんていうか、ちょっと不平等。…なのでは?
そんな思いが返答する声の中に僅かに滲んでいたのか。途端に奴は得意げになり、ごく上機嫌で上からひけらかし始めた。
「いや、まだなの?気の毒すぎ。…あれはさぁ、一見の価値あるよ。ていうか、実際見るまではさ。女の子がご当主さまにやられてるところを見るだけだろ、別に普通じゃん。そんなのこれまで飽きるほど見てるし。普通に弄って挿れられる目の前の女の方が全然いいよ、何が面白いんだか。って思ってたのにさぁ」
俺もそう思う。他人がしてるとこ見て何が面白いんだ。
まあ、今回の俺の場合は。と頭の中で小声で付け足す。…たまたま対象が個人的な知り合いで、しかもちょっと複雑というか微妙な距離感同士の間柄で。感情的にいろいろなくもないのに今後身体で触れ合う可能性がない、って状態だから。見たいか見たくないかって言われたら少し見たいかも。って感じてはいるが、それは相手が追浜だからって理由限定なので…。
彼女のことをよく知らないこいつとかが何の関心も持てなくてもそれは共感できる。俺だって、ステージの上で弄ばれる女の子が追浜でさえなきゃ。そんなの見るよりまず目の前の子を捕まえて組み伏せることしか頭にない、ってなるのは想像がつく。
だけどそいつは、意外にも目を輝かせて興奮気味にそのときの追浜について語り出した。
「そうとしか考えてなかったんだよ、見るだけでやれない女のどこがいいんだ、って。…そしたらさあ。何だろ、全然違うんだ。外から来た女の子の反応って」
「…そうなん?」
何とも複雑な気分で尋ね返す。
そいつは俺が話に乗ってきた、と見て嬉しそうに勢い込んで話し出した。それでも一応、周囲を憚って声を落としてはいる。控え室の中はこのあとの激しい快楽を待ち侘びる男たちの浮ついたざわめきで一杯だったから、言うほど周りが俺たちの話に耳を傾けてたとは思えないけど。
「うーん、感じたんだけどさ。あの子可愛いのに、この歳になるまで全然経験なかったのかなって…。外の人ってほんと、奥手というかセックスに興味ないんだな。だからかマジで何も知らないみたいで…。何しろあの凪さんと漣さんだからさ。テクもすごくて、多分処女なのに。脚おっぴろげてびくびくみんなの前で何度もいって。のけぞって潮まで吹いちゃってて」
あんまりリアルに想像するとやばい。…祭事が始まる前に出ちゃいそうだ。
そいつは確保した聞き手を逃すもんか、とでも言わんばかりに前のめりにこっちに身を寄せてきて。夢中でうっとりと話を続ける。
「全部奥まで丸見えで、エッチでしどけなくてさ。…でも、それだけなら村の女でいくらでも見てるし。何ていうか、恥じらいがすごいんだよ。村の子ならそこまで気持ちよくいければ超嬉しい、最高!って百パーセント歓喜しかないじゃん。けど、あの子は。…全然違うんだよ。表情とか反応とか」
多分そうなんだろうな、と納得しかない。俺の知ってる彼女なら。…きっとそういう印象だろうな。何となくわかる。
「これまで何も知らなかったのに。自分の身体がこんなにいやらしいんだ、本当は気持ちいいのが好きなんだ。って思い知らされて、パニック気味でさ。…喘ぎながら、雄叫びあげていくたびに目の色に罪悪感ましましで。羞恥と屈辱感で穴があったら入りたい思いなのに。自分のそれは拘束されてるから全然閉じられずに、衆目の前で無理やり晒されてて…」
うっとりした目で上手いこと言おうとするな。
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