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「ご当主さまたちに弄られて、やめて欲しいけどやめて欲しくない。って自分に気がついちゃって、どうしようもなく身悶えしてて…。俺、わかったよ。罪悪感とか恥辱ってめっちゃ抜ける。こんなに感じちゃ駄目なのに、抵抗できない。ってなってる女ってほんと、やらしいよ。村の女はねぇ、それがないから。…あれ見たあとだと。ちょっと物足りないな、ってなっちゃって」
目を爛々とさせて熱弁しまくったあと、現実に返ってため息をつく。
「絶望と屈辱で打ち萎れたあの子を組み伏せて、あそこに擦り付けてめっちゃ気持ちよさそうに夢中で腰遣ってたご当主さまたち見てて、あんな羨ましかったことないよ。襟首捕まえて引き剥がして、俺がめちゃめちゃ突っ込みたかった。…快感でとろとろに蕩けながら恥ずかしさで身悶えてるあの顔間近に見つめながら、思いきり中に注ぎ込みたかったなぁ。お前確か、一応彼女と知り合いなんだろ。ちょっとくらい何かの機会にやらせてもらえない?二人同時でもちろん構わないからさ」
「絶対無理だろ。…器候補だよ?」
何かの機会っていつだよ。と内心引きつつ即否定した。
村の人間は普通、夜の祭事のときに毎回精も根も尽き果てるほど発散するから。結婚してない場合はそれ以外の場面でセックスしたがることってまずない。
月にニ、三回めちゃくちゃ好きなハイカロリーで味の濃いものを限界まで暴飲暴食するわけで、それ以外のときはほとんど食べたくならないような状態と同じ。濃厚生チョコとか豚骨ラーメンとか、それだけを延々目一杯詰め込んだらしばらくはもういい、ってなるやつ。っていえばまあ大体感覚としては伝わると思うけど。
俺に関していうと、この前お屋敷に招ばれたときにたまたま、ど昼間に水底さんの部屋でやっちゃったのが記憶に新しいがあんなのは例外も例外。
向こうから水を向けられたのと、このチャンスを逃すと水底さんと出来ることってもう本当にそうそうないな。って思ったから乗っただけ。普段ならまずない。
こいつだって、今まで祭事でも昼間の日常でも普通に顔合わせてきて、特段ど助平だとか性欲があり余ってる奴だとか感じたことない(綺羅とかと違って。あいつなら、まぁ。…昼間でも機会があれば普通に嬉々としてやりそう、誰とでも)。平常時に下ネタ言ったり猥談したりもない、ごく普通のやつなのに。
それが隙見てでもこっそりあの子とやりたいとか。半分冗談にしても、目は言うほど笑ってないし。ちょっとは本気で言ってるんじゃないか?って思うとさすがに怖い。
あまりきつく否定するのも気が引けるので、やや気を遣った表現で遠回し気味に注意してやる。
「…どう考えてもあの子がそんなの喜ぶとも思えないから。無理やりみたいなことにならざるを得ないし、それはやばいだろ。仮にも警察官の娘さんだし、下手すると揉み消せなくて犯罪になるかもよ。そんなの明るみに出たらお前、村追放されるんじゃないの?だって器候補の女の子を無理にやろうとするってことだろ。…夜祭家が黙ってないよ、そんなの」
「あーそうかぁ…。お世継ぎの器ってことは。最初に突っ込むのはあのお二人じゃなきゃいけないんだよね。そりゃ、そうだよな」
一応納得したみたいだけど。けろっとしてそんな風に済ませられる神経がすごい。俺なんか、夜祭家の双子の怒りがどうこう以前に。…何ていうか、例えば村の水神様とかに。めちゃくちゃ祟られそう、と思えて正直想像するのも怖いんだけど。
本気で問題だってわかってるかどうか怪しい。と心配になり、さらに重ねて念押ししとくことにした。
「器に危害を加えるといろんな意味であとがやばいぞ。絶対やめといた方がいい、脅しとかじゃなくて」
「わーってるよ。言ってみただけじゃん駄目元で。…俺もそこまで考えなしじゃないって。ただ、本人もあれの良さがだんだんわかってくればさ。月に一度じゃとても物足りない、ってそのうち自然と身体が疼くようになるかもなって…。そういうタイミングに乗じでもしないと、まじで夜祭家の籍に入っちゃったら全く触るチャンスなくなるじゃん。…いや、そうでもないのか。だいぶ先にはなっちゃうけど」
急に何かに思い当たった様子で独り言めいた呟きを付け足す。何の話してんだ。
「俺たちに彼女に触れるチャンスがあるってこと?そんなの知らないけど。そういう儀式でもあるのか」
秋山の言い方的に、ルール無視の非合法なやり方じゃなくて何か正当な手段。っていうニュアンスを感じた。まあ、こいつが自分の願望に都合よく解釈した裏技的な何かかもしれないが。
何の気なしに尋ねただけなんだけど、俺のその質問に奴は少し得意げな表情を浮かべ肩をすくめてみせた。
「誉って、本当にそういうの何も知らないのな。興味ないにも程があるよ。…あのな、器って夜祭家に入って無事跡継ぎを産んだらそれで役目終わりってわけじゃないのよ。身体の続く限り子どもを産まなきゃならない。今の代の御母堂は健康上の理由でそれが叶わなかったわけだけど」
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