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 そして、もしバイオニクス・ヒューマノイドが実用化されたとして。妻や息子と瓜二つの存在ができ、そこに彼らのデジタルコンストラクトがインストールされたとして。自分はかつての自分と同じように彼らを愛することができるのだろうか。  答えはもう見えていた。自分の光学式義眼(オプティック・デバイス)にはデジタルコンストラクト契約解除用の電子書面がポップアップで表示されている。この書面の『解除します』に視線を合わせて、ウインクをすれば、二人は永遠に消えるのだ。  本当ならきっとぽとぽとと涙がこぼれるはずなのだろう。だが涙腺(るいせん)ごと光学式義眼(オプティック・デバイス)にした自分は涙を流すことさえできなかった。  決められない。そんな優柔不断さを抱えたまま、光学式義眼(オプティック・デバイス)に映るブラウザタブを切り替え、もう一度、デジタルコンストラクト接続画面を呼び出した。  ――接続(リンク・イン)します。  その合成音声が流れると同時に、目の前にある黒い台座型のホログラム発生装置に二人の姿が浮かび上がった。  ――お帰り、あなた。  ――パパ。お帰り。  立体ホログラムがそう言った。
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