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「なあ、俺、二人のデジタルコンストラクト、消そうかなって思ってるんだ」
僅かな時間をも無駄にしないように本題から入った。二人が悲しげな表情を浮かべる。
――どうして? 私達に会いたくないの?
妻、グレイスが問いかけてきた。
そんなわけがない。会いたくないわけがない。だからこそ、二人を失ってから二年の間、生活を切り詰めてでもレンタルサーバーの管理費を捻出してきたのだ。
――ここにあなたが来てくれさえすれば、私達は一緒にいられるのよ?
グレイスの言葉は、すぐにでも屈してしまいそうなほど甘い誘惑だった。
――後悔がないように毎日精一杯生きなきゃ、でしょ?
どうしたらいいのか分からなくなった瞬間、妻の口癖が頭を過った。
「なあ、グレイス。お前の口癖だったよな。後悔がないように精一杯生きなきゃ、って」
そう問いかけるとホログラムの妻は力いっぱい頷いた。
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