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訪れた場所は、妻と息子が眠る場所だった。とは言っても遥か昔の人間の文化にあった霊園などではない。デジタルコンストラクトが保管されているデータセンターだ。
目の前には三メートル近い高さの真っ黒な物理サーバーが置いてあった。自分の電脳からそこに接続すると、アカウントの認証を求められた。
頭の中でパスコードを思い浮かべると、光学式義眼に表示されていたパスコード入力欄に数字とアルファベットが自動入力されていく。
――認証されました。
その文字が光学式義眼に表示されると同時に、サーバーの手前に置かれた黒い円形の台座の上に、妻と息子の立体ホログラムが投影された。
古いSF映画にあるような青一色でできた子供騙しのものではない。触れられるのではないか、そう思わせられるほどリアルなできだ。
――お帰りなさい、あなた。
――父さん。また来てくれたの?
目の前に映し出された妻と息子のホログラムがそう語り掛けてきた。それを聞くだけで涙が出そうになる。
「また、来たよ。五日前にも来たばかりなのに」
そう零すと妻がふふっと笑った。
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