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「あ」
突然、何かに気がついたような顔つきで、友達の椎名くんが呟いた。
もうすぐクラス替えという三月のこの時期、うちの高校はクラスごとにバスに乗って日帰りで遊ぶという浮かれたイベントを行う。卒業を控えた三年生以外の、一二年生たちだけの行事だ。
二年生の私たちは、早咲きの桜、河津桜を見に江戸川区にある大きな公園に訪れている。東西約3キロにも渡る広大な公園で、フィールドアスレチックやバーベキュー、フラワーガーデン散策などの多彩な遊びができるらしい。
そんな広い敷地の中で、私たちは隣のクラスの沢田くんと佐藤さんにバッタリ出会ってしまった。
沢田くんは椎名くんの友達なのかライバルなのか微妙なところにいる人だ。
私──藤川愛に言わせてもらえば二人はただの友達だと思うけど、椎名くんは何故かそれを認めていない。
「出たな、沢田」
いきなり人の顔を見て「出たな」はないだろう。
沢田くんは無表情だけど、見る角度によっては泣きそうな顔をしているとも言える。
「突然だが、お前に勝負を申し込む!」
突然だな。
しかしそれが椎名くんだ。彼は真面目な顔をしていつも変なことを言う。
「何の勝負?」
目の前にはアスレチック広場もあるし、ちょっと歩けばポニーに乗れるポニーランドもある。どちらで勝負するんだろうと思っていたら、椎名くんはスマホを取り出した。
「人狼ゲームで!」
……この三月の晴れ渡った空の下で、なぜ?
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