椎名くんは騙されない

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 こうして、唐突に人狼ゲームが始まった。  プレイヤーは、  真顔で変なことを言う椎名くん。  無表情で無口な沢田くん。  普通女子の代表、佐藤さん。  金髪ヤンキーの小野田くん。  そして、毒舌ツッコミの私、藤川の五人。  プレイヤーにはそれぞれ役職があり、市民が三人、人狼が一人、預言者が一人という内訳になる。  市民は何の能力もないけど、全滅する前に人狼を追放できたら勝ち。  預言者は占い能力があり、誰か一人を占ってその人の役職を知ることができる。  ちなみに私は……とりあえず今は内緒。 「よーし、騙されないぞ!」  椎名くんが気合を入れる。 『朝になりました。制限時間三分以内に、追放する人を一人選んでください』  アプリ内のゲームマスターに促され、私たちは丸くなって顔を見合った。  この中に一人だけいる人狼を、話し合いで見つけて追放しなくてはならない。 「誰を殺る?」  小野田くん、いきなり目がバキバキで顔が怖い。 「あいつ、絶対人狼だよ」 「こらこら、顔で判断しない」  耳打ちしてきた椎名くんにこっそりと返す。 「じゃあさ、みんな、自分がもし預言者だったら誰を占う?」 「小野田くん」  小野田くん以外の四人が同時にそう言う。 「ふざけんな! 俺は人狼じゃねえ、預言者だ!」  小野田くん、ブチギレ。自分の役職をバラす。  その時、私は沢田くんが異常にびっくりしていることに気づいた。 「ねえ、沢田くん。もしかして、本当は沢田くんが本物の預言者なんじゃないの?」  沢田くんはビクッと肩を揺らした。 「あ……うん……」 「嘘つけ、沢田! 預言者は俺だ! みんな、信じてくれ!」  しかし、誰も首を縦に振らない。  制限時間、残り一分。 「ふっふっふ」  すると、椎名くんが笑い出した。 「お前ら、すぐにバレる嘘をつくんじゃねえよ。俺こそ本物の預言者だ!」 「何っ⁉︎」 「いったい、誰が本物の預言者なんだ……?」  動揺する男たち。  いや、預言者より人狼を探せ?
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