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「ごめんね、藤川さん。勝っちゃった」
「佐藤さんが人狼だったの⁉︎ それじゃ、沢田くんは?」
「……市民」
いや待って。意味が分からない。
「何で預言者って嘘ついたの⁉︎」
「……預言者? って聞かれて、つい……」
「沢田くん、人から聞かれたことに否定できない人なんだよね」
そうか。そう言われてみれば、沢田くんは自分からは一度も預言者だとは言ってない。
「じゃあ、椎名くんが預言者?」
「いや。俺は場を混乱させてやろうと思ったただの市民」
「死んで正解のクズだな」
お前みたいな奴がいるから訳が分かんなくなるんだよ。
「だから最初に言っただろ! 俺が預言者だって!」
小野田くんがブチギレする。
「いや、だって顔が人狼だったし」
「顔は関係ねえって何度も言ってるだろ!」
ちなみに小野田くんが預言者だと宣言した時に沢田くんがキョドっていた理由は「声が大きくてびっくりした……」からだった。それを私が勘違いして、沢田くんこそ預言者じゃ? と思ってしまったというわけだ。
「まさか佐藤さんが人狼だったとはなー。騙された!」
「天使だと思ってた……」
「やだ、恥ずかしいよ沢田くんってば」
沢田くんは素直で純粋だな。
両手で顔を覆って恥ずかしがる佐藤さんも可愛らしい。
それに引き替え、ゾンビの二人は醜い。
「どっちが先に沢田の本物のダチになれるか勝負だ、椎名!」
「いや、小野田はもう諦めたら? その顔じゃ無理」
「やっぱり顔⁉︎」
さっきからずっと言い争いをしている。
お前ら、一生やってろ。
あくびをしたら、風に乗った河津桜の花びらが一枚、ふわりと目の前を横切った。
今日も平和な空だった。
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