お仕置き

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お仕置き

 油断した! と思ってカイさんを見上げると、すぐに唇を塞がれる。  後頭部に回された手が髪を握るように強く掴み、噛み付くようにキスをされる。分厚い舌が差し込まれて口内を激しく蹂躙し、口端から唾液が溢れた。  がっしりと腰に回された腕は私を逃す気などないのだと、身を捩ることができないほど強く私の身体を抑え込む。 「ん、…っぁ」 「…っ、もも…」  ぷはっ、と息継ぎをしたくて顔を逸らすと溢れた唾液をカイさんの舌が舐めとった。火が灯ったような身体では、それすら刺激が強くて肩を竦めてしまう。そんな私にカイさんがふっ、と笑みを漏らした。 「な、い、いま…っ」 「ん、お仕置き」  これが!? 「こ、これお仕置きになるんですか!?」 「ほらまた」 「…ぅむうっ!!」  口端を上げて笑いながらまた噛み付かれる。  その内に、腰に回った手が腰やお尻を弄るように動き出した。  はあはあと息が上がり足に力が入らなくなった私を、カイさんが両腕で抱き止め支えてくれる。白いシャツに縋り付いて息を整えていると、頭上からカイさんのクツクツと意地悪な笑い声が聞こえた。 「ほら、もも。いつまでもご飯が食べられないぞ」  誰のせいだと思ってるわけ!? なんか悔しい…! 一人翻弄されているなんて!  余裕な雰囲気で笑うカイさんを、滲む涙そのままに睨みつけた。 「お仕置きじゃないとキス出来ないってこと?」  途端、カイさんの笑顔が固まった。  ん、あれ? 私なんか変なこと言った…?  カイさんの顔をじっと見上げていると、段々眼許が赤らんで来て、眉根を寄せ、ム、と口を尖らせる。それ好き。かわいい。 「? か、カイさん…!! きゃあっ!!」  太ももの裏に腕を回されグイッと高く抱き上げられた。思わずカイさんの首にしがみ付く。  カイさんはそのままキッチンを出てリビングを抜けた。 「ま、待ってカイさん…っ!」 「ダメだ、待たない。煽ったももが悪い」  煽ったって何!?  足で扉を蹴り開けると、そこはベッドルーム。  上品な家具が最低限置かれて、大きな窓から夜景が見える。カイさんは私をベッドに下ろすとベッドサイドの明かりをつけた。慌てて起きあがろうとすると、肩を押されてベッドに沈み込む。  カイさんが上から覆い被さり、私の頬を撫でた。  端正な顔を赤らめて、ひとつ、熱い吐息を吐く。カイさんの色気とその熱に充てられたように、私の身体がカッと熱くなったのが分かった。
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