きらりと

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きらりと

 私こそ、カイさんの隣に相応しくいられるんだろうか。こんなに素敵な人の隣に置いてもらえるのかな。そんな言葉を伝えたいのに、震えて上手く言えないでいる私に、カイさんは不安げに眉根を寄せた。 「もも、…うんって言ってくれ」  カイさんが俯いて私の手に額を寄せた。  滲む視界でカイさんのつむじをぼんやり見て、綺麗なつむじだな、なんて思って。  そんな自分がおかしくなって、ふふっと声を出して笑うと、目許を赤く染めて、不安げな様子のカイさんが顔を上げた。  やだ、大型犬みたいでかわいい。  私は滲んだ目許を指で拭うと、手の中の指輪をじっと見つめた。 「カイさん、私…幸せだなって、思って」 「…うん」 「今こうして、カイさんといられることが」 「うん」 「私、私こそカイさんの隣にいられたらなって、思ってたの」 「もも」 「こうやって…カイさんのつむじをぼんやり見て」 「…つむじ」 「ふふっ、…楽しいね」 「ああ、楽しいよ。ももと二人ならいつでも」 「うん。…私がカイさんの優しいところもダメなところも、つむじも、全部見ててあげる」 「…ははっ、なんでつむじなんだ」  カイさんはガクッと頭を垂れて身体を揺らし笑った。その様子に私も一緒に笑う。  カイさんは私の手から箱を手に取って中の指輪を取り出すと、そっと私の左の薬指に嵌める。そうして、その指輪にキスを落とした。 「結婚しよう、もも」 「…はい」  満面の笑顔で応えると、カイさんがくしゃりと顔を歪めて笑った。 「カイさん、泣いてるの?」 「……泣いてるよ。嬉しくて…ありがとう、もも」  そう言ってギューっと私を抱き締めて肩に顔を埋めるこの大きな仔犬を、私はよしよしと撫でて抱き締め耳元で囁いた。 「カイさん、大好きだよ」 「俺も。ももが好きだ…一番大切だよ」 「ふふっ、私が一番?」 「当たり前だろ。いつだって一番だ」  きっと色々これから大変なんだろうけれど。  一緒にいるためにクリアしなくちゃいけないことがたくさんあるだろうけれど。  まずは、電話で見せた雪がまだあるうちに、カイさんと一緒に実家に帰ろう。  きっとあの雪を、カイさんは笑顔で喜んでくれると思うから。  ぎゅっとカイさんを抱き締める私の指に、きれいな石がきらりと光り、反射した。
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