会いたかった

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会いたかった

 各フロアで一人、また一人とエレベーターを降りて行く。  カイさんのいる部屋は重役の部屋しかないフロアで、そこまで乗っていく人は私たち以外にいない。最後の一人がカイさんに会釈をしながら降りて行くのをぼんやりと見送り、静かにドアが閉まるのと同時に、視界が陰り、気が付くと目の前がカイさんでいっぱいになった。  名前を呼ぼうと見上げると、壁に押し付けられ後頭部を大きな手で支えられて唇が塞がれた。  ちゅ、と柔らかく押し当てすぐに離れて、はむ、と唇を喰まれる。  やわやわと唇の柔らかさを堪能するように何度も柔らかく押し当てられたカイさんの唇は、頬にこめかみにキスを落とし、そして耳元に移動した。 「…もも、会いたかった」  その低く掠れた声に、不覚にも鼻の奥がツンとする。カイさんのスーツにしがみ付いて、言葉を発すると泣いてしまいそうで、黙って頷いた。  カイさん、カイさん、カイさん。  言葉に出来なくてもまるで聴こえているように、カイさんは「うん」と言いながら私を柔らかく抱き締めた。  カイさんの後ろでエレベーターが到着する音を知らせた。慌てて身体を離すと、カイさんは繋いだ手をそのままにエレベーターを降りる。 「え、あの」 「誰もいない」  そう言うとカイさんは廊下を進み、奥の扉をネームで解錠すると、私の手を取ったまま入室した。  大きな窓にシンプルなデスク、応接セットに壁には大きなモニターが掛けられている。  ドラマのセットのような部屋の誂えと景色に気持ちを奪われていると、カイさんは持っていた珈琲と私の手から取り上げたタブレットをデスクに置き、私を腕の中に閉じ込めた。 「もも? なんか言って」  そう言って私の耳にキスをする。 「ほら、洋海が来てしまう」  低い声が直接耳に吹き込まれて、背中がゾクゾクする。電話で聞くのとはやっぱり違う。  唇が触れている耳の先から熱を持つのが分かって、カイさんもそれに気が付いたのか、ふっと耳元で笑うと耳朶を食んだ。 「…っ、あ」  くちゅ、と耳元で水音がしてカイさんの舌がねっとりと耳を這う。 「あ、の、まって、待って…っ」 「んー? 何も言わないならこのまま…」  カイさんの唇が耳から首へと降り、唇で食まれ、舌がゾロリと首筋を舐める。大きな手が背中を這い、スカートの中へ手が入り込んだ。  まっ、待って待って待って〜!!  こんなところで何する気!? 「さっ、さっき…っ、んあっ」  スカートの中に入り込んだ手が大きくお尻を掴み揉みしだいた。  やだもう、手つきがいやらし過ぎる!! 「はあ…もも、いい匂い…柔らかい…」 「もう! ダメですってば!」 「確かに、ダメだな…止まらなくなる」  揶揄われているのは分かるけどまだカイさんの腕の中にいたくて、熱い顔を胸元に押し付けてじっとしていると、頭上からふわりと笑う気配がした。  そして、頭にひとつキスをして、低い声で囁く。
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