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マンションのエントランスの壁に背中を預け、大きなヘッドフォンをしてリズムを刻んでいる美男子は、私の顔を確認するや否やヘッドフォンを耳から外し満面の笑みを浮かべる。
どこかで見たような、見なかったような。
最近若い子がみんな同じに見える。
ついに私もその年代になったのか。
美男子は笑顔を保ったまま駆け寄り大胆に抱きついてきた。
なんだ、なんでた。
うろたえていると美男子は耳元で囁く。
「ようやく会えましたね。佳音神」
——佳音神
聞き慣れないワードがラストピースのようにピッタリと嵌り、走馬灯の如く一気に記憶が流れ込んでくる。
バカな。なんてバカなんだ。酔っ払いの私。
美男子とはいえ、見ず知らずの男を雇うなんて。
しかもご丁寧に住所まで教えていたなんて。
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