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最後の異世界転生
悪いことをすると地獄に落ちるよ。――親や先生にそう言われて育った人は多いのではなかろうか。
殊に日本人の場合、仏教に対して信心深い人もそうではない人もなんとなく地獄の存在を信じていたりするものである。それは、死んでなお恐ろしい目に遭いたくないという心の表れであり、同時に悪いことをした奴はちゃんと裁かれてほしいという願望でもあるのだと俺は考えている。
で、俺はというと。
日本という国で、ちょっと悪いことをした人間だった。――訂正、結構悪いことをした。直接人を殺すような度胸はなかったが、窃盗とか恐喝とか脅迫とかはひとしきりやったし、間接的になら殺人の手助けをやったことも多分あっただろう。薬もやってたし他にも――とりあえず、説明したらキリがねえくらい余罪があったと言っておく。自分でも思うが、なかなかのクズ野郎だったと思う。親父がアル中の飲んだくれで、母親にも殴られて育ったとか言い訳しても仕方ねえくらいにはな。
そんな俺は二十代で、まあちょっと大きな組織の武力抗争に巻き込まれちまってあっさり死んだ。
そして、死んで地獄に堕ちたってわけだ。
ただし、地獄ってやつは俺が想像していたものとは大分違ってたんだよな。ほら、八大地獄とか八寒地獄とかあるだろ?灼熱の釜でぐつぐつ煮られるとか、体が折れて裂けるほど極寒の土地に追いやられるとか、まあそういうものを想像していたわけだ。
でも、俺が墜ちた地獄はそんなんじゃなかった。閻魔様っぽい人が現れて言われたことがこれだ。
「そなたには無限転生の地獄に堕ちてもらう!」
「……ムゲンテンセイ?」
なんだその、ラノベで聞いたことがあるようなものは。俺は首を傾げて、直後された説明に青ざめることになるのだった。
無限転生とはそのままだった。俺が罪を償うまで、記憶を保持したたまま無限に転生し続ける罪。
しかも転生するのは、大抵ろくでもないものと来たから最悪だ。
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