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第2話 アサクラ
ライブラ学園はひと学年につき6つのクラスを持つ9歳から18歳までの子供達が通う学校だ。藍色と白を基調としたヨーロッパの城のような校舎が特徴で、生徒たちには学園指定の藍色のシャツの着用が義務付けられている。
「お!オニキス!おはよー!」
「待ってたぜー、俺の課題を手伝ってくれよ!」
教室に入ってすぐ、オニキスの元に友人のエドとジュンがやってくる。朝から母親に叱られ重い気分になっていたオニキスは彼らの明るい表情を見て心がすっと安らいでいくのを感じた。
「おはよ、エド…まだあの課題やってなかったのか?」
「違うんだよ!他の課題に夢中になってて頭の中になかったんだよ!」
「それを一般的に何て言うか知ってるエド?“忘れてた”っていうんだよ?」
「ジョンは厳しいな〜……なー、オニキス、一生のお願い!課題写させて!」
「ったく、しょうがねぇなぁ…」
目を潤ませるエドにオニキスは軽く微笑むと持ってきた課題を彼に渡した。
「あ!もー…オニキスってば、エドに甘すぎ!」
「いいんだよ、エドは友達なんだから。ジョンも困ったことがあったらなんでも俺に言えよ、この俺が全力で助けるから。」
そう言うとジョンは口に両手を当てオニキスを見つめた。
「うわ!…俺の友達いい子すぎ…??」
「?、いきなりどうした?」
「いや…オニキスくんに乙女のジュンちゃんがキュンキュンしちゃいまして…。」
「乙女?、お前は男だろ?」
「気持ち悪」
「黙れエド」
「おーいお前ら席につけ。」
両手を頬にあてて大袈裟に身体をもじもじさせるジュンをオニキスが不思議に思っていると、担任の教授が教室に入ってきた。そして、それを見たオニキスは慌てて左の奥にある自分の席に座る。
「えー、突然だが、今日からこのクラスに新しい仲間が加わることになった。早速だが、入ってきてもらおう
…アサクラさん。」
…なんだ?転校生か?
そう思いながら出てくるであろう扉を見つめていると、1人の華奢な少年が出てきた。
白百合の花弁のような真っ白な肌と着せ替え人形を連想させる細い身体。顔立ちは17の少年にしては幼く、分厚いまつ毛の下に雫のような大きな瞳がついている。
あまりにも綺麗で可憐さのある容姿だったため、オニキスは一瞬女子生徒かと思ったが、胸元につけている男子専用のループタイがそれを否定していた。
「アサクラ ナギといいます。」
…ずいぶん高い声だな。
緊張しているのかナギは視線を少し下に向けてクラスメイトにそう名乗った。そしてクラスメイトの視線が少年に向けられる中、一瞬だけナギとオニキスの視線がぶつかる。
「みつけた…。」
「?」
ナギが小さい声で言ったその言葉はオニキスの耳に届かなかった。
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