第1話 1人の青年

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第1話 1人の青年

 これは、この地、ライブラに伝わる昔話だ。この世には光と闇の2人の神がいて、2人はいつも喧嘩をしている。闇の神様はいたずらっ子で悪い人間に特別な力…魔を与え様々なものを滅ぼしてしまう。対して、光の神様はその愚かな人間と神様をやっつけようと自分の選んだ人間に、闇の神と同じように特別な力…“魔法”を与える。 「…だから、悪いことをする人は必ず光の神様に選ばれた魔法使いにやっつけられるのよ、だからオニキス。いい加減、私の言うことを聞きなさい。」 「…。」  …うるっせぇな。  長い母親の話を聞きながらオニキスはそう思って口の中で欠伸を噛み殺した。 「はいはい、わかったよ。」 「何よその態度は…いい?何度言っても聞かないから言ってるのよ。 お母さんは今沢山の人を救う薬作りに忙しいの、もし今の実験が成功すれば、 こんな街を出て貴族に仲間入りできるかもしれないのよ。 だから、もう二度と私の研究室には入ってこないで。17歳にもなったら学校ことくらい1人でなんかできるでしょ?」  人差し指を杖のように振りながら母親はそう言ってオニキスを睨みつけた。対してオニキスは目があった途端に顔を逸らし、足元の鞄を背負って玄関に向かう。母親は家で四六時中、薬の研究を行っているため、外に出てしまえばオニキスは1人だ。 「…なによ反抗的になっちゃって、そんなんじゃ立派な研究者になれないわよ。」  いってきます、も言わずに家を出ようとするオニキスに母親はそう言った。オニキスは聞こえなかったフリを装い、バタンッ!と大きな音で扉を閉め、学舎のライブラ学園へと向かうのだった。
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