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「死んだあと何になりたいってどういうこと?そんなんあんたに出来るん?」
柏木は金原仙人が言った意味がよく分からなかった。
「出来ますよ。それが私の得意ですから。祈りを通じて知り合った方々の希望の来世を紹介しています」
「そうですか?ほったら言うだけでも言うとくか。あかんで元々ですからね」
「ええそれがいい」
「人間でもええんですか?」
「まあ仕方ない、神は喜びませんがね。動物とか虫とかになりたいとは思いませんか?虫だとカメムシなんてお勧めですよ。一発かまして飛び去ってしまう。あんな面白い虫はいませんよ」
「過去におるんですか?カメムシになった人は?」
「いません」
柏木は騙されずに済んで良かった。
「騙したわけではありませんよ。私の好みでして」
柏木が心で思ったことを金原に当てられて驚いた。たまたまだろうともう一度心で悪口を言った。
「それほど悪い仙人ではありませんよ。だったらあなたの希望など聞かない。そもそもここに来ない」
やはり読まれてしまった。
「なんでうちの心が読めるんですか?」
「あなたと通じた時からあなたの心が読めるんです」
柏木は仙人は大袈裟だろうがそれなりの霊力者であると確信した。
「そうですか。それじゃお言葉に甘えて希望を言わしてもらう。もういっぺん予想屋になりたい。客に大穴を取らしてやりたいんです。それが夢なんや」
「そうですか、やはり人間ですか。まあいいでしょう。ちょっと脳内を読ませてください。頭を出して、もっと前に出して」
柏木は炬燵台の上に頭出した。金原仙人は生命線を額に合わせて掌を広げた。指が裂けるほどに広げるとその指が脳に沈んで行く。
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