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 咲乃がいなくなったとき、俺がどのくらい嘆き悲しんだか……それはもう、思い出したくもない。だが、四年が経ち、俺は徐々に恢復(かいふく)してきたはずだった。現実を受け止め、どうにか折り合いをつけ、いつまでもそれに囚われていないようにと思い始めていたところだった。  だからなのだろうか。彼女の存在が俺の中から薄れていく……しかし俺の深層心理はそれを許さず、彼女の夢を見させることで抵抗しているのだろうか。  あるいは、咲乃が俺を、許さないのだろうか。彼女が俺を、呼んでいるのだろうか。  そうして俺は四年ぶりに、咲乃と最後の時を過ごした場所にやって来た。山奥に世間から身を隠すかのようにひっそりと存在する小さな村だ。当時、免許を取ったばかりの俺は、車を走らせて彼女とあてのない旅をしていた。長い夏休みで暇を持て余していたのだ。その村は偶然に発見した場所だった。そこで彼女は……。  再び村に訪れると、俺の中にあった疑惑は確信に変わった。  俺は咲乃に呼ばれてやって来たのだ。彼女は夢を通じて俺に呼び掛けていたのだ。  自分を見つけてほしい、と。  ……咲乃は行方不明とされているが、それは彼女の死体が発見されず終いだったからである。俺だけでなく、彼女の両親や友人も(みな)、もう彼女が生きていないとは分かっている。  俺のせいなのだ。咲乃は俺と共に山の中を探索し、そこで俺とはぐれ、遭難してしまった。それきり、彼女を見た者はいない。  彼女の死体は今も山のどこかにある。今も俺を待っている。  俺は彼女を見つけるために、山の中に這入っていった。
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