蒸気仕掛けの親孝行

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 蒸気都市エルマナ(いち)の蒸気技師カーリヤは、田舎からやってくる父を駅で待っていた。男手一つで自分を育ててくれたことへの感謝をこめて、彼女は父をエルマナ中心部のホテルのディナーに招待した。しかし懸念がある。足が悪い父は長時間歩くことができない。そこでカーリヤは父にある贈り物をした。今日はその贈り物を使って父がやってくるらしいが―― 「カーリヤ、待たせたなあ」 オウムガイを思わせるドーム型のひさしに、触手のようにうねるくすんだ黄金色の配管。カーリヤお手製の蒸気駆動車椅子に乗って、父が近づいてくる。 「ホテルまではどのくらいかかるんだい?」 カーリヤは自信満々に答えた。 「この車椅子に乗っていればあっという間さ」
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