第3話 アシュリー・エインズワース

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 彼の手から布を受け取って、涙を拭う。……化粧が落ちているような気がする。でも、そんなこともうどうでもいい。  ……私のことを好きだとか可愛いとか言ってくれたノーマンは、もういない。 「そ、その、俺でよかったら、話、聞きます、から……」  彼の声は震えていた。もしかしたら、彼は女性の扱いに慣れていないのかもしれない。  まぁ、突然泣き出した女性の扱いなんて、知っているほうが少ないだろう。 「あと、俺、アシュリーって言います。アシュリー・エインズワース」  一応とばかりに彼が名乗る。……あぁ、自己紹介もまだだった。 「私は、ロザリアです」 「……ロザリアさん」 「はい」  ノーマンよりも少し低い声が、私の名前を呼ぶ。わざわざ私のことをさん付けしているということは、彼は丁寧な人なのだろうな。 「アシュリー、さまは」  私の口が自然と彼の名前を呼んだ。  彼が、ゆるゆると首を横に振ったのがわかった。 「様なんてつけないでください」 「で、ですが……」  エインズワースとは、貴族の家系だ。しかも、ルシエンテス子爵家よりも上の伯爵家だったと記憶している。  ……あれ、でも。 「お、お貴族様、ですか……?」  今更ながらにそれに気が付いて、私はアシュリーさま……さんを、見つめた。彼は、気まずそうに視線を逸らした。  しかし、お貴族様が空腹で倒れていたの!?
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