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(いや、意味が分からないんだけれど!?)
だって、お貴族様っていうことは、裕福なはずだ。空腹で倒れるなんて、思えない。
ついでに言えば、エインズワース伯爵家が貧しいというお話も、聞いたことがないし……。
「……えぇ、そうです」
彼、アシュリーさんが気まずそうに視線を逸らす。その姿に、私の涙が引っ込む。
「実は、俺、両親と喧嘩しまして」
「……はぁ」
「だから、逃げてきました。いわば、家出です」
……うん、家出ね。理解したわ。だけど。
「……あの、アシュリーさんは、家出したことは?」
「これが生まれて初めての家出です」
「でしょうね」
もっとこう、家出っていうのは計画を立ててするものではないのだろうか?
そう思って、私はアシュリーさんをジト目で見つめる。彼が、頬を掻いた。
「俺、三男坊で末っ子なんです」
「……は?」
「なので、両親が過保護で。挙句、そろそろ結婚を考えろとうるさくて……」
ゆるゆると首を横に振ってそう言う彼。……うん、大体読めた。
「ご両親が出したお相手が、気に食わなかったのですか?」
オブラートに包もうとして、包んでいない言葉が出来た。
でも、アシュリーさんは特に気にした風もなくこくんと首を縦に振る。
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