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「いや、だって普通嫌でしょう。俺、恋愛結婚したいんで」
つまり、彼は夢見がちなんだ。一瞬で、それを理解する。
「あのですね、恋愛結婚なんて……」
――やめたほうが、いいですよ。
そう言おうかと思った。だけど、言えなかった。だって、それはあくまでも私の主観だ。
(それに、今の私は冷静じゃないし……)
ノーマンに振られて、一時的に恋愛が嫌になっているだけかもしれない。だったら、私が下手なことを言うのはダメだ。
うん、ダメダメ。
「……ロザリアさん?」
そう思っていると、不意にアシュリーさんが私の顔を覗き込んできた。彼の美しい目が私を射貫いて、一瞬だけドキッと心臓が跳ねたような気がして。……頬に、熱が溜まる。
「な、なんでもないですっ!」
何だろうか。アシュリーさん、まじまじと見るとすごくお顔がいいのよね……。男前っていうの? イケメンっていうの?
まぁ、すなわち美形っていうこと。
(旦那様も、美形だけれどね……)
ふと思い出したのは、私の雇い主であるリスター辺境伯……ギルバート・リスター様のこと。
彼も相当な美形だ。ただ、アシュリーさんとはタイプが違う。彼はどちらかと言えば強面だし。女性子供には怯えられるタイプだし。
(そう言えば、旦那様と奥様も割と恋愛結婚……に、入るの、かしら?)
あのお二人は年の差があるとは思えないほど、仲睦まじい。奥様は旦那様にべた惚れだし、旦那様も隠してはいるようだけれど、奥様にべた惚れ。……使用人には、バレバレだけれどね。
「……あの、ロザリアさん」
ぼうっとしていると、またアシュリーさんに声をかけられた。ハッとして、彼に意識を向ける。
彼は、少し困ったような表情をしていた。
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