第1話 確かに、蔑ろにしたのは私だけれど……

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「ロザリアは僕よりも仕事が大切なんだろう? だったら、仕事と結婚したらいいじゃないか」  久々に恋人に会える。そう思って、必死におしゃれしてお休みを取って。  普段は王都に住んでいる恋人を迎えに行ったとき。開口一番に彼はそう言った。 (……え?)  私たちの間を冷たい風が吹き抜ける。彼の真っ赤な目を見つめると、彼は気まずそうに視線を逸らした。 「……え、えぇっと、どういう、こと……?」  行き場のない手が、宙を彷徨う。唇の端を引きつらせながら、私は恋人である彼――ノーマン・スティールに手を伸ばした。 「言葉通りの意味だよ。ロザリアは僕のことよりも、仕事が大切なんだろう?」 「そ、そんなことない……わ。私にとって仕事が大切なのは認めるけれど、ノーマンのことも大切よ!」  実際、その通りだ。あまり裕福ではないノーマンの生家スティール子爵家にお金を入れるためにも、私は必死に働いていた。  確かにここ最近は私が辺境勤めになったこともあり、連絡は途絶え気味。会うことも滅多になくなっていたけれど……。 (でも、ノーマンだって応援してくれたじゃない……!)  私が辺境に行くことに不安を抱いていたとき。ノーマンは「ロザリアのことを応援するよ」と言ってくれた。その言葉は、嘘だったのだろうか? 「そんな言葉はいらないよ。……今日は、それを伝えたかっただけなんだ」 「ちょ、ちょっと待って……!」 「僕たちはもう終わりだよ。……じゃあね、ロザリア」  ノーマンがそう言って、降りてきた馬車にまた乗り込む。彼が御者に合図を出せば、馬車はまた颯爽と来た道を走り去っていった。
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