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(……なんで)
そう思って、私は下唇をかみしめる。
(連絡は途絶え気味だったし、会うことも少なくなって……。だけど、破局するなんて、思わないじゃない!)
ノーマンはちょっと女々しくて、束縛の激しい男性だった。だけど、真摯なところとか、真面目なところとか。好きだった。
彼も私も子爵家の生まれで、身分も釣り合いが取れている。私の家は魔法の名家で裕福。対するノーマンの家は少し貧しいけれど、私が魔法使いとして稼いでいれば問題ないと思っていた。
(……確かに、蔑ろにしたのは私なのかもしれないけれど)
しかし、彼はそれを咎めてくることはなかった。ノーマンの性格上、嫌だったらこちらに怒鳴り込みにでも来ただろうし、手紙だって送ってくるはずだ。……何が、あったのか。
(それとも、本当に私に愛想が尽きちゃったのかな……?)
仕事ばかりで、女っぽくなくて。色気がないと今まで散々言われてきた。
けれど、そんなところも好きだってノーマンは言ってくれていた。……もしかして、私は油断したの?
(そうよ。人の心なんて簡単に変わるものなのよ。……努力を怠った私が、悪いんだわ)
ノーマンに飽きられないように。愛想を尽かされないように頑張るのが、私の役目だったのだろう。
……失ってから気が付くなんて、私はなんと間抜けな女なのだろうか。
「本当に、仕事のことしか頭にないのね、私って」
これじゃあ、ノーマンが言った「仕事と結婚しろ」というのも当たっているのかもしれないなぁ。もしかしたら、仕事と結婚した方が幸せになれるのかも……とまで考えて、虚しくなってやめた。
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