第1話 確かに、蔑ろにしたのは私だけれど……

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 私には普通に家庭を持って、幸せになるという夢だってある。そりゃあ、貴族に生まれてしまった以上、自由な恋愛は出来ない。そこは嫌というほど理解していたし、付き合うのならば同じような身分を持つ人だと考えていた。  だから、ノーマンに告白されたときにとっても嬉しかったのは、よく覚えている。……幸せって、長く続かないのね。それを、嫌というほど理解した。 「……今日、どうしよう」  一日休みを取ったので、この後は暇だ。同僚たちには「今日は恋人とデートなんだ」と言ってあるから、すぐに帰るのもなんだか……虚しいな。 「せっかくだし、一人で飲もうかな」  ……真昼間から飲むなんてそれはそれで問題かもしれない。でも、失恋した日くらいはいいじゃない! この際、やけ酒よ! やけ酒! とまで思って、私は気が付く。 (今日、そんなにお金持ってきてなかった……!)  ……こうなったら、仕方がない。少しぶらぶらと散歩するくらいにしよう。あと、近場の店でランチを食べよう。うん、そうしよう。ランチ代くらいはお財布の中に入っているしね。 (あーあ、私って何なんだろうなぁ……)  仕事は上手くいっているし、家族関係も職場関係も良好。……上手くいっていないことと言えば、恋愛関係くらいなんだろう。  人はそれを贅沢というのかもしれない。だけど、誰だって夢見るでしょ? ……完全無欠の、幸せな日々。 「本当に、今日は厄日ね」  この出来事は、私の所為であってノーマンの所為。  ここまで関係が冷めきっているのに気が付かなかった私の所為でもあって、前触れもなく別れを告げてきたノーマンの所為。  どっちもどっちって、ことか。はぁ~、何とも言えないわよ。もう。
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