第2話 空腹の男性

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「俺……その」 「……はい」 「……なにか、食べるもの……」  ……一体彼は今、何と言ったのだろうか?  私はそう思ってきょとんとしてしまう。 (聞き間違いじゃなかったら、食べるものって……)  まさかの、空腹で倒れていたっていうこと!?  いや、少なくとも身なりはきれいだし、普通に働いていると思っていた。 「く、空腹で、倒れたのですか……?」  恐る恐る、確認のようにそう問う。そうすれば、男性はこくんと首を縦に振った。  ……よし。 「少し、待っていてください。何か食べるもの買ってきますから!」  財布の中には銀貨が一枚入っている。あんまり豪勢なものは買えないけれど、普通にパンとかならば買える。  そう思って、私は地面を蹴って走り始めた。 (っていうか、今日は本当に厄日……!)  ノーマンには振られるし、空腹で行き倒れた男性を見つけてしまうし。……後者は、厄とは言えないか。  少なくとも、彼は私がそばを通りかかったことで助かっているのだから。  私はそんなことを考えながら、この近くにあるパン屋の扉をたたいた。
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