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ある日、事件は起こった。
クラスの中心人物で、学級委員の柏木くんという人がいた。
昼休み、僕がいつものように僕の席に座っていると、柏木くんは何人かの男子を引き連れて僕の元へやって来た。
「ねえねえ、矢野くん、経験人数何人?」
「え…?」
思わぬ質問に、言葉が詰まった。
多分、これ、ノリだよね。なら、なんか面白い答えを探さなきゃ…えっと…えっと……
「い、いや…僕…そんな経験…なくて…」
やっぱり、僕の口からはそんな答えしか出てこなかった。
すると、周りの男子がひそひそと何か話し始めた。
柏木くんが口角を上げるのが見えた。
あ、もしかして…笑ってくれた…!?
「あのさぁ、矢野くんってなんか彫刻みたいな顔で、気持ち悪いね。」
僕は、その言葉を言われてから変わってしまった。
自分の顔が気持ち悪くて気持ち悪くて仕方がなくなった。
鏡に映るのは、人を嘲ているような目、作り物みたいな鼻、固く結ばれた唇。それらを見ていると、吐き気がして、トイレへかけ込んだ。
吐いても、胃液のようなものしか出てこなかった。涙と嗚咽が止まらなくて、でも、こうしていると、全てを吐き出していると、何だか凄く楽になった。
母はそんな僕をとても心配した。学校を辞めようと何度も言われた。でも、僕は、変な意地を張っていた。ここで辞めたら逃げたみたいだと。折角今まで耐えてきたのに、今さら…あと1年半耐えれば卒業できる、と。
それに、僕には警察官になるという夢があった。警察官になって、みんなを守れる、強い人になるんだと。だから、部活も強豪で、体育に力を入れているこの学校に入学したのだ。だから、絶対に逃げたくなかった。
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