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次の日、廉は悲しくなりながら学校へ行く準備を始めた。学校から帰ってきたら、いつもみたいに母が酒を飲みながら「おかえり」と言ってくれるかもしれない。そんな期待が心のどこかにあった。
だが、廉がランドセルを背負おうとしたその瞬間、玄関のドアから低くて重いノックの音が聞こえた。
廉は母かと思い、玄関に向かった。しかし、ドアノブに触れたところで廉は気づいた。
母はいつもインターホンを押す。
廉はドアの穴からそっと外を覗くと、そこには大柄な男が三人いた。まだ幼い廉にも、その人たちのただならぬ雰囲気がわかった。
「智代さーん、いますよねーー。お金、まだ返してないみたいですけど、どうなってんすかー」
母の名前を呼ぶその声に、廉は怯えながら後退った。
「開けてくれないなら、こっちから無理やり開けますよー」
廉はその言葉を聞くと、窓を開けて外へ飛び出した。幸いにも廉の住む家はアパートの一階で、ベランダからすぐに外へと逃げ出せた。
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