第5話

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 次の日。学校に行くと、みんな心配してくれた。 「熱とかあったの?」 「ノドまだ痛い?」  そういう質問に、うなずいて。何事もなかったよ、大丈夫、ただの体調不良だから。そういうことにして、がんばって、ほのかな笑みを作ってみた。  強がったウソは、誰にもバレなかったみたい。しゃべれないから口をすべらせないで済んだし、普段からオドオドしてるせいで、挙動不審でも不自然に思われなかったんだろう。素直に良かった、と思えた。  良いんだ、これで。  どうせわたしは、頑張れない。  それでも、こうやって笑えてるじゃん。みんな、気遣ってくれるじゃん。  この温もりに、身体をあずけて。これからも、なんとなくやり過ごして。何事もなかったかのように、過ごせるのかもしれない。  11月。頑固な残暑もやっと身を引いて、すこしずつ、寒さが忍び寄ってくる。  それに合わせるように、わたしの心も冷ややかなものに支配されつつあった。  目標を失って。わたしはわたしに、すっかり失望していた。
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