第2話

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 何回目かの音楽の授業。  先生の指示で、1回全パート合わせて歌ってみることになった。 「う〜ん。アルトさん、声が聞こえませんねえ。他のパートにつられないように頑張ってください」  その授業が終わった直後。 「ちょっと、アルト集合!」  戸畑(とばた)さんが号令をかけた。  クラス内のアルトパートメンバーが、全員で車座になる。 「アルト、別に他のパートにつられてるワケじゃないんだよね。もとから声がちっさいの」  戸畑さんが切り出すと、 「ミアの言うとおりだと思う」  北方さんが真剣な顔でうなずいた。 「でもさ〜。アルト、もとからの人数が少ないから、仕方ない部分もあるんだよね~」  小倉さんが、場をとりなすように口を開く。 「コラ、少数精鋭と言え」  すると、戸畑さんはイラついた様子で、消極的な意見をバッサリと斬り捨てた。でも小倉さんはひるむ気配もなく、笑顔のまま続ける。 「うん、そ〜かもね。ひとりひとりはすんごく上手いから、もっとおっきく声出していこ〜!」  小倉さんのおかげで、雰囲気がふわっと明るくなった。  みんな、前向きな表情で顔を見合わせている。 「んじゃ、そういうことで。解散解散」  北方さんが気だるげに手をたたいたのを合図として、アルトパートメンバーは散っていった。 ♪ ♫ ♪ ♬    音楽の授業があるたび、アルトの声は大きくなっていった。もとからよかった音程もさらに安定感を増して、『こんな短期間でこれだけ成長できるなんてすごい!』って素直に尊敬できる。  でも、他のパートに負けて、かき消されているのはあいかわらずだった。  そして、頑張るパートメンバーの様子を、わたしは他人事のように眺めている。それも、あいかわらずだった。  そして。  ついに。 「平坂ちゃん、ちょっとこっち来て」  北方さんが、感情の見えない顔で手招きした。  イヤな予感しかしなかったけど、素直について行く。  その先には。  ピリピリムードの戸畑さんと、困ったような小倉さんがいた。
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