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わたしはじっと床を見ていた。
すぐ前には戸畑さん、小倉さん、北方さん。1の7アルトパートの中心人物となっている、体育会系陽キャ女子3人組だ。
わたしは、その顔を見ないようにしていた。
言われることはなんとなく予想がつく。
「最近、アルトのみんな頑張ってるよね」
北方さんが切り出した。
「それな」
「うん、そうだよね」
「…………」
戸畑さんと小倉さんは相づちを打つけど、わたしはなんにも言えない。
「でもさ、それ、全員じゃなくない?」
次は戸畑さんが、わざとらしく話を進めた。
「ホンット、それ言えてる」
北方さんが即座にうなずいて、
「……まあ、確かにね」
小倉さんも、ためらいながら肯定する。
3人の言わんとすることはとっくに理解していた。でも。
「………………」
わたしは、なんにも反応できなかった。
そんな態度にじれたらしい。戸畑さんはついに、ストレートな言葉を放ってくる。
「アンタさ。合唱、真面目にやってないでしょ。もっと声出してよね」
「……………………」
「ねえ。……ねえ! なんで無視すんの!」
怒鳴られて、わたしは肩をビクリと震わせた。
「か、かわいそうだよ……やめてあげようよ……!」
小倉さんはさすがに不安を感じたみたいで、止めに入ってくれる。けど、頭に血がのぼった戸畑さんには聞こえていない。
ガッと肩をつかまれて乱暴に揺さぶられる。
「ねえ……ねえ、ねえってば! 聞いてんの!? 返事くらいしなよ!!」
ガクガクと頭が振り回される。視界がぶれて、気分が悪くなってくる。
「ミア、やりすぎ」
北方さんが引きはがしてくれたとたん、わたしは地面にひざをついた。
「大丈夫?」
小倉さんがわたしの背中に手を置いて心配してくれる。でも、
「……」
のぞき込んできた彼女を無言で一瞬にらみ、他の2人にも同じ目を向けたあと、わたしはその場を逃げ出した。
「……なにあれ。感じワル」
戸畑さんの声が聞こえたけど、言われ慣れた悪口に心はちっとも動かなかった。
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